派遣社員として色々な会社で働いてきた。名前を覚えてもらえず「派遣さん」と呼ばれたまま契約期間を終了する会社もあったし、正社員が一人しかおらず派遣社員だらけで立場が逆転している会社もあったし、派遣と正社員の区別なく家族のように受けて入れてくれる会社もあった。

今派遣されている会社は、アットホームな感じの会社だ。ある部長の下について働いているのだが、まるで親子のように仲良くさせてもらっている。他の女性社員さんからは「キャバ嬢みたい」と嫌味を言われてしまうこともあるけれど、そんな風に嫉妬させてしまうくらい、その部長は父のように私によくしてくれるのだった。

ある日その部長が外出中に、部長の乗る会社の車が事故に遭ったとの連絡が来た。停止中の会社の車の横腹に、おばあさんの乗った軽自動車が突っ込んだとのこと。とりあえずの報告の電話だったので、ケガの有無についてなどの情報は得られなかった。
(参考:次の自動車は乗り潰してから廃車にしたいと思う

状況が全く分からず社内がざわつく中、部長が会社の車に乗る時は必ず助手席側の後部座席に乗るので、万が一そこに突っ込まれていたら…と思うと私も気が気ではなかった。

結局その日中に、おばあさんの車が突っ込んだのは運転席側の後部座席だったということがわかり、不幸中の幸でけが人が誰もでなかったことが判明した。会社の車は停まっていたということで、10対0で事故られたということになるが、結局その車は大破して廃棄処分になってしまったのだった。

そして後日談になるが、本当はその日部長は私を一緒に連れて行こうか迷っていたそうだ。もし私が乗っていたら、どんな座席の配列になっていたかわからないけれど、けが人0では済まなかったはずである。「連れて行かなくて本当によかったよ」とほっとする部長を見て、できるだけ長くこの会社で更新できればいいなあとつくづく思ったのだった。